マルタと介護付き旅行!?理学療法士の大関さんに【バリアフリーと旅行の今】について聞いてみた

今回、語学留学経験多数で、マルタ共和国での生活を送られたことがあり、福岡の介護付旅行会社で勤めるなど、多彩な経験をお持ちの理学療法士、大関純平さんに、海外での暮らし、介護付旅行会社での経験、日本のバリアフリーツアーの現状をインタビューさせていただきました。

最後には現在大関さんが勤める東京都町田市にある「訪問看護リハビリステーション ヨリドコ」についても伺っています。

では早速、大関さんの略歴から紹介させていただきます!

1、理学療法士 大関純平さんの略歴

■沖縄出身

■高校を卒業後、長崎のリハビリテーション学校に入学

■卒業後、福岡県久留米市の回復期リハビリテーション病院に就職

■病院を退職後、語学留学のため5ヶ月間フィリピンへ

■続けて、4ヶ月間アジアを中心に一人旅を行う

■福岡に戻り、介護付旅行会社の立ち上げに参画する

■旅行会社を退職し、もう1度海外に行きたいという思いから語学留学のため、マルタ共和国へ。半年間の留学後、そのまま、現地で就職する。

■マルタ共和国で1年ほど会社勤めを行うも、新型コロナの影響により日本に帰国することを決意する。帰国時には、2週間の隔離生活を経験する。 
じゅんぺいチャンネルより

■東京都町田市にある訪問看護リハビリステーション ヨリドコへ就職する。

−−−−−経歴を見せて頂いただけで、ワクワクしますね。。笑

−−−−−なぜ留学先にマルタ共和国を選んだのですか??

留学費用が安かったことが大きな要因です。他にこれといった理由はないのですが、ヨーロッパに行ったことがなかったことと、環境的に良さそうだったからです(笑)

−−−−−マルタ共和国ではどのような生活を送っていましたか??

マルタ共和国は、日本でいう沖縄のような雰囲気で、ヨーロッパ全土から観光客がバカンスに訪れる場所です。海がとても綺麗で、休みの日は仲間とボートを借りて近くの島まで行き、海水浴を楽しんでいました。

マルタではまったくストレスなく過ごすことができました。仕事は9時から17時までで、土日は遊べて、給料も困らないくらいもらえていたので。笑

私は、将来的に日本に帰りたいと思っていたのですが、このまま生活すると日本で生活できなくなると感じるくらい、とても素晴らしい環境だったし、充実した時間を過ごすことができました。

−−−−−マルタの暮らしを体験すると日本に帰ってからの生活に苦労しそうですね。笑


2、介護付旅行会社に勤めるまで

−−−−−なぜ旅行会社に勤めようと考えたのか教えて下さい。

私は、回復期病院で理学療法士として働いていました。当時は患者さんの機能回復に注力し、勉強会にも参加していたのですが、ある時、“患者さんの生活範囲を予後予測し始めた”ことに気づきました。“この方の機能レベルはこのくらいだから、このくらいの生活範囲だな”と。理学療法士としてこのような考えも大事だとは思うのですが、それによって、患者さんの可能性や未来を奪ってしまっているのではないかと感じるようになり、自分がやっていることに自信がなくなってしまいました。その後、理学療法士を続けるべきか悩むようになり、1度留学をしてみようと思い、最初の留学を決めました。

ただ、留学から帰ってから何をしようかまとまっていませんでした。そんな時に、ふとテレビ番組をみていたら、大学生の起業を支援するドキュメンタリーが流れていました。そして、エンドロールに「ワクワクしなければ、人とお金は動かない」という言葉が映し出されました。その言葉に感銘を受け、自分自身が“ワクワクすること”は何だろう?と考えた時に『旅行が好きだ』と思ったのです。「じゃあ自分が好きな旅行を自分が障害を持っても、高齢になっても行けるような環境を作りたい」と考えるようになりました。

患者さんと接していても、旅行や外出の話をしていると笑顔でワクワクしている姿を見ていたので、それだったら留学後は、障害を持っている方や高齢の方が安心して旅行に行くための支援ができる仕事につきたいと決心しました。

そして、福岡県にある『あすも特注旅行班』という会社で働くこととなりました。 あすも特注旅行班のHPはこちら

3、バリアフリーの現状について

−−−−−現状のバリアフリーやバリアフリーツアーについてどのように感じるか聞かせて下さい

個人的には以前より車いすで外に出ている方が増えている印象を持っています。電車に乗っていても、車いすの方をみかける頻度が多いので、徐々にバリアフリーも浸透してきているのではないかと感じています。

一方、旅行に関してはまだまだ課題(旅行に行きたいけど行けない方々など)が山積していると感じています。アンケートでも要介護者の旅行に対するニーズ(旅行経験者で、旅行にまた行きたいと回答した割合は72.4%)に対して、実際に旅行に行くことができている人は少ない現状があります。

※要介護者の旅行を阻害する要因レポート http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/report/rp1207b.pdf

※車いす、足腰が不安なシニア層の国内宿泊旅行拡大に関する調査研究https://www.mlit.go.jp/pri/shiryou/press/pdf/shiryou160413_2.pdf

上記の課題に対して個人として要因はいくつかあると考えています。

1つ目は、金銭的な部分です。介護が必要な場合、先の見通せない不安もあるためお金を使うことをためらってしまうケースが少なくありません。また、介護を家族に頼っている場合、お金を自身の旅行に使用することへの負い目を感じている方が多いように感じます。もちろん特別な配慮が必要なため、安価なツアーに参加できないことも挙げられます。

2つ目は、特に高齢の方に当てはまると思うのですが、バリアフリーやバリアフリーツアーに対する情報を取得しづらい状態にあるのではないかと考えています。現在はインターネット記事やYouTubeなどで多くの情報を得ることができます。当事者の方々が発信することも増えてきました。しかし、高齢の方はその情報を取得することができずにいるように感じています。(約9割の方が、要介護者が旅行するための情報は不足していると感じている。国土交通省 車いす、足腰が不安なシニア層の国内宿泊旅行拡大に関する調査研究)https://www.mlit.go.jp/pri/houkoku/gaiyou/pdf/kkk130.pdf

「そもそもどうやって旅行に行くのか?」「どのような環境なのか?」というように旅行に行く前段階からハードルがとても高くなっているのです。我々も海外旅行に行くときは、「ガイドブックがない」「ホテルの情報がない」「目的地がどのような環境であるのかわからない」状態では大きな不安を感じるのではないでしょうか?

あすも特注旅行班で働いていた時は、このような事例を多く経験しました。そして、依頼のあったお客様に対し同じ身体能力や介助量である事例を提示し不安な箇所を中心に情報を届けるように心がけていました。同じような障がいや身体状況の方が”旅行に行けている”ということを知ることで、本人も家族も安心し、実際に旅行へと繋がった事例も多く経験しました。現状、情報は多くなっているので、情報を取得できた方は旅行に行けたけど、取得できなかった方は行けなかったという格差が広がっているように感じています。

最後に人的な要因が挙げられます。家族を含め旅先でサポートしてくれる人がいれば行けるという方が一定数いると思います。特に医療的な支援が必要な方は、専門職が付き添うことで行ける可能性が大きく広がります。

−−−−−金銭面の課題を除外して、既存のサービスや環境でどなたでも旅行には行けると思いますか?

ほとんどは行けるのではないかと考えています。

バリアフリーツアーを取り扱う事業者は全国各地に増えており、医療依存度の高い方に対応する旅行会社も増えてきているからです。必要な費用を払うことで、その方の状態に合わせて専門職が支援してくれます。旅行者の身体の状態や使っている車いすの種類などにもよりますが、全国各地多くの場所に行けると思います。

旅行するうえで課題になるのが移動手段です。移動手段は車、飛行機、電車(新幹線)、船の4パターンが主な移送手段となります。車移動であれば、旅行支援を行う介護タクシーサービスがあります。飛行機は、車いすの方やストレッチャーが必要な方、酸素吸入器(在宅酸素療法を受けている方)が必要な方などにも対応しています。新幹線や電車も同様に対応してくれます。船も種類にもよりますが対応は可能です。

移動手段に対するインフラは整ってきているため、旅行へのハードルは徐々に下がっていると感じています。

−−−−−金銭面の負担は避けては通れないと思います。そのあたり、どのようにお考えですか?

バリアフリーツアーには介護支援の形に応じていくつかの種類があります。

1つ目はオーダーメイド型です。顧客から依頼があった時に、その方に必要な情報を集め、プランを立て、旅行当日に顧客の自宅に伺い、そこから同行支援を行うという流れでサービスを提供しています。サービスとしては、その方の状態に合わせて0から設計していくため、どうしても時間的なコストが発生し、その分お客様の金銭的な負担が大きくなってしまいます。また、オーダーメイド型はお客様1名に対し、付き添いスタッフが1名同行する場合が多いため、どうしてもホテル代や交通費も含めて負担が増えてしまいます。

2つ目はツアー型のサービスです。HISなどが展開しているように、旅行プランがパッケージ化されたものです。複数人で旅行を行うため、1人当たりの金銭的な負担は減るのですが、個別のケアは限られてしまいます。

そして、以前から注目していたのは、あ・える倶楽部さんのようなサービスの仕組みです。トラベルヘルパーという介護や旅行の専門的知識を有するスタッフが全国に点在しており、あ・える倶楽部さんはそのトラベルヘルパーとの仲介を行ってくれます。遠方へ旅行にいく場合も、目的地で状態に合わせた必要なサービスを依頼することができます。

資料請求もできるようなので、詳しくはあ・える倶楽部HPへ

あ・える倶楽部のHPはこちら

日本トラベルヘルパー協会のHPはこちら

−−−−−障害をお持ちの方や高齢の方で旅行に行きたいけど行けない方、そのような方々はまず何をすれば良いのでしょうか?

まずは、介護付きの旅行会社に問い合わせてみてはいかがでしょうか??

介護付きの旅行会社は、多くの経験があり、知識を持ったスタッフの方がいらっしゃいます。そこで不安なことや疑問点を確認するのが良いと思います。

次に、全国各地にはバリアフリーツアーセンターというバリアフリーの情報を集めた団体があるので、そこに問い合わせてみるのも良いかと思います。

バリアフリーツアーセンターのHPはこちら

個人で旅行へ行こうとするととても手間がかかってしまいます。例えば車いすで新幹線に乗る場合は、車いす専用座席を指定する必要があります。さらに、リクライニング車いすを使う場合は、多目的室を利用する必要があります。しかし、この多目的室はJR西日本では予約できるのですが、JR東日本では基本的に予約ができません。そのため、どのように対処するか窓口で話し合う必要があります。https://jr-shinkansen.net/tamokuteki.html

また、飛行機を予約する時には、電動車いすであればバッテリーの種類を伝えたり、吸引器を持ち込む場合には、型番を伝えるなど事前に航空会社へ情報を提示する必要があります。

−−−−−高齢の方や障害をお持ちの方は、「周りに迷惑をかけてしまう」や「私なんかでは無理」というように心の障壁を感じてしまう方が多い印象です。どのようにお考えかお聞かせ下さい。

最初から泊まりの旅行だと障壁が高くなってしまうと思います。まずは、短時間での外出や、近場に出かけることを提案すると、皆さん安心して受け入れてくれる印象を持っています。

また、療法士の目線から考えた時に、対象の方が不安を口にした場合、まずその方の身体能力を評価します。そして、その方のニーズを確認し、行先の環境情報を収集します。それらの情報を照らし合わせ、この場所だったら行けると思いますよ?と提案すると対象の方は安心してくれることが多いです。

高齢の方や障がいをお持ちの方で、普段から外に出ることが少ない方は、外出や旅行に対して自ら高いハードルを設定してしまう方が多い印象です。その為、情報を提示してハードルを下げる試みや、行先の環境と対象の方の身体能力を照らし合わせる作業を行うことで、ハードルがなくなり、前向きに取り組んでくれるのではないかと考えています。

−−−−−多くの考えや知識を得ることができました。ありがとうございました。


−−−−−最後に、現在大関さんが勤めている訪問看護リハビリステーション ヨリドコの紹介を行っていただきます。

訪問看護リハビリステーション ヨリドコは、東京都町田市小野路町にあります。一般財団法人ひふみ会 まちだ丘の上病院が運営しており、2020年10月1日に開設されました。

ステーションがある「ヨリドコ小野路宿」は約300坪の敷地があり、敷地内には訪問看護とカフェの入る母屋、コミュニティースペース棟、蔵があります。コミュニティースペース棟では、体操教室の開催や、イベント会場として住民の方々の集いの場として使っていただくことを考えています。また、コミュニティースペースの横には蔵があり、今後はギャラリースペースとして地域の方々に開放する予定です。さらに、敷地の裏には竹林が広がっています。今後、みんなで美味しい竹の子を食べられるよう、竹林の整備を進めています。

ヨリドコは地域の方々が集える場所、拠り所となれる場所を目指しています。もし興味がある方は一緒にヨリドコを盛り上げていただけると嬉しいです!

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